東洋医学はヨーロッパ地方(西洋)から見た東方にある別の医学ということになります。
古すぎる概念のため、現代では通用しないこともありますが、病気ではないが調子がわるいという状態にめっぽう強い医学です。
不妊症は病気ではないにしろ、妊娠しにくい身体の状態(症状)ということになります。
ですから、病院の治療と併せたり、病院の治療を休んでいるかたには最善の選択になりえるのではないかと思われます。
症状という結果には、必ず原因があります。
東洋医学では日常の習慣や、環境が身体に影響することを重要視します。
食事
精神・性格
運動・仕事
ということが遠まわしの原因であったり、直接の原因であったりします。
食事療法は色々なことが言われていますが、当院はシンプルに日本食を中心にした、バランスの良い食事をお勧めしております。ある特定のものを食べすぎることが良くないように感じます。
ただ、甘いものの過食は身体を冷やしすぎるので、「ながら食」といわれる、暇なときにテレビやネットをみながらお菓子をついばむことや、暑くもないのにアイスなど冷やす食べ物を取ることは控えるように指導させていただいております。
以前、基礎体温が全く上がらない、常に35度台という方がいたのですが、よくよく聞いてみますと「寝る前に毎日アイスを食べている」ということが発覚し、辞めていただいたところ、あっという間に高温期で37度台になりました。
その後無事妊娠、出産されたわけですが、身近なところに原因があるのだと痛感しました。
精神と性格に関しては、不妊症という継続したストレスはどのような方でもおかしくなります。
加齢による焦り、月経前のプレッシャー、体外受精への恐怖や不安、高いお金を払い続けること、友人知人の妊娠など少しずつ心にため込んでいきます。
そうすることで脳への負荷が自律神経とホルモンバランスに影響して、体調も悪くなってしまいがちです。
妊娠の環境は精神的な安定感が一番ですので、頑張っているつもりが遠ざかってしまっています。
不妊治療不妊という言葉もあるくらいです。
本来の妊娠は、愛し合う夫婦が、心地の良い行為のあと、幸せな気持ちの中で体内で受精、着床し、少しの不安と喜びの中で育んでいくのが理想です。
しかし、現実的には子作りの行為が義務となり、痛い思いや不快な思いをしながら不妊治療をしていくことが多いでしょう。
実際、治療のお休み期間中に少数ながら自然妊娠する方もいますし、第二子が案外簡単に妊娠することが多いのも、プレッシャーの少なさが、身体内部の安定を生み出している結果のなのかもしれません。
性格面はどうしようもありませんが、気にしすぎる性格の人は難儀するようです。不安感の感じ方が人より多く、それゆえに身体の変動も起きやすくなります。
できるだけ強い意志で妊娠するという気持ちを持つことは大事なことですが、強すぎる執着もまた、身体を損ねます。「赤ちゃんはいつか来てくれるけど、そのためにいい身体を準備しておくね」といった感じで過ごしていただけると良いですね。
運動や仕事
当院に来られる方の運動歴を中学生くらいから初診の時にお伺いするのですが、80%ぐらいは何にもされていないように見受けられます。
身体の成長期に運動をしていないと、生殖力が弱くなってしまうのかもしれませんが、今更後の祭りです。
実際、体力のない方が多いので、妊娠出産するための体力作りをしてもらいます。
週に2~3回のウォーキングを30分くらいから始めていただきます。時間のない方は15分で、その代わり毎日のようにしてくださいとお願いしています。
当院のある福井県は北陸地方ですので、晴れた日が少なく良く雨が降ります。曇りがちの空ですし、冬などは雪も降りますし寒いです。名古屋で修業していたときは、むしろ雨などめったに降らなかったので、患者様には毎日ウォーキングしていただけました。
そこで室内でしていただけることとしてスクワットとストレッチをお勧めしています。(やりかたはご来院したときにでも)
骨盤の血流が少なく、冷えが強いタイプの人には良い運動になると思いますので、是非行ってください。
学生時代の運動歴がそれなりにある人は、妊娠しやすい傾向にありますが、国体レベルや激しすぎる部活にいた方も、ある意味おかしくなってしまっています。陸上で月経が止まるくらい走っていたことがある場合は要注意です。
そのような方は腰椎や頸椎、膝や足首を痛めている方がほとんどで、身体の姿勢が悪く、骨盤の中の環境もかなり悪いです。そして、激しく運動していた方が全く運動しない生活になると、よけい体の血流が悪くなりやすく、むしろ体質的には全く運動していなかった人より悪くなります。
しかし、潜在的な体力はかなりあるので、うまく調子を整えると案外簡単に妊娠します。適度にほぐすくらいの運動をしていただくのが良いでしょう。
仕事に関しては、激務だったり、かつて不規則なお仕事やストレス障害になる寸前であった人は不妊症になりやすいのではと思います。
能力の高いハイキャリアの方に多く、その分悩みやすいかもしれません。成功体験が多いので、不妊という失敗感がとてもつらいと感じます。
努力すれば大抵のことが何とかなった人生が、どうしようもない壁に阻まれるつらさは未体験のことでしょうから、つらさは相当なものになります。
そこで、仕事で痛めた身体を鍼灸で改善していき、適度な運動という努力をすることで妊娠に近づけることになると思われます。
このタイプの人も、気持ちと身体が落ち着いたときひょっこり赤ちゃんが来てくれることが多く見受けられます。
東洋医学は心と体のつながりを重視します。
はやる気持ちをおさえ、自分の身体を整えて妊娠の準備をしていく。
そのような状況に東洋医学はきっとお力になれると考えております。